偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
ーーもうヤダァ。鼻血でそう。
起き抜けに喰らってしまった刺激的すぎるこの状況に、頭がくらくらしてくる。
おかげで、本来ならば真っ先に気づきそうなことにも気づけないでいた。そこに。
「……その様子だと、昨夜の記憶はないようだな」
突如、男性の落ち着き払った低い声音が耳元に響き渡ったことで、恋の意識はすぐさまそちらに集中する。
一瞬、知らない男性のものかと思われたが、自分の他には、恋のことを抱き竦めたままのカレンの姿しかない。
「キャッ! ヤダッ、放してッ!」
ようやく我に返った恋は、今さらながらにカレンの身体を両手でぐいぐい押し返す。
するとやけにすんなりと腕から解放されて、カレンと向かい合う形となる。
ハッとした恋は、大慌てで布団を手繰り寄せ、胸もとで抱きかかえるようにして覆い隠した。
けれども、依然としてこの状況を把握できずにいるため、混迷を極めた頭では何かを発することができない。
恋はベッドにへたり込んだまま、正面で胡座を掻いて気怠そうに長い髪を掻き上げつつ視線を落として思案する素振りを見せるカレンの姿に、釘付け状態だ。
ちなみに、カレンの足元には布団がかろうじてかかっているおかげで、大事なところは見えないが、男らしい裸体が露わになっているせいで、視線のやり場に困る。
なのでカレンの綺麗な顔に視線を集中させている。