偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
ーーも、もしかして、克服できたってことなのかな?
……いやいや、そんなはずはない。つい最近だって。
ーーだったら、どうして?
長年の悩みが解消されて、嬉しいはずなのに、それよりも驚きと戸惑いしかない。
そんなの当然だ。
克服できるなんて思ってもみなかったし。もう諦めていたのだから。
恋は信じられないとばかりに自分の掌を凝視したまま黙考の真っ最中だ。
真向かいにいるカレンの存在などすっか失念してしまっていた。
なぜ、どうして、と自問自答を繰り返している恋の意識に、やけに低い声音が割り込んでくる。
「俺に拒否反応を示さないことが嬉しくて、つい調子に乗ってしまったが。単純に、男として意識されてないってことなのか?」
だが内容ではなく、カレンの存在を思い出しただけだった。
同時に、ある可能性が浮上する。
ーーもしかして、見た目が男じゃない女装男子のカレンだから大丈夫だったってこと? だったら確かめたい。
そんな思いが頭の中を占めていく。
こうなれば、もう何も見えない。