偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました

 しばらくの間、恋はカレンのあたたかな腕に包まれたままでいた。

 そうしているうち、あることに気づく。

 どうしてカレンは、男性恐怖症のことを知っていたのだろうか。助けてもらった際に気づいたのだろうか。

 でもそんなこと一度も話したことなかった気がするんだけど。

 あのときのことを思い出さないように、気を遣ってくれていたからなのだろうか。

 そんなことよりーー。

 確か男性にしか欲情しないって言ってなかったっけ?

 なのに、どうしてこんなことになったのだろう?

 一体全体、これはどういうことなのだろうか。

 身も心もすっかり落ち着いてきて、ようやく思考も正常になってきたようだ。

 次々に浮上してくる疑問が膨れ上がっていく。

 今一番気になるのは、もちろん女装男子であるカレンのことだ。

 一度浮上してしまった疑問は膨張する一方で、そのことしか考えられなくなっていく。

 こうなってしまえば、先ほど同様、他のことは何も見えなくなってしまう。

 猪突猛進という言葉があるが、まさにそれだ。

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