偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
イノシシと化した恋はそれらをハッキリさせるべく、カレンの厚い胸板を両手で押しやりつつ疑問の全てをぶつけてしまうのだった。
「ねえ、カレン。どうして私が男性恐怖症だってこと知ってるの? それに前に言ってたよね? 男にしか欲情しないって。なのにどうしてこんなことになっちゃってんの? それから、なにそのTLヒーローさながらの俺様口調は。昨夜なんて俺様通り越して、野獣みたいだったし。ねえ、カレン。どういうことなの?」
つい数分前まで怖がって半べそかいていた恋の豹変ぶりに、呆気にとられてポカンとしていたカレンだったが、ハッとした途端、たじろぐ様子を見せる。
「あっ、いや、それは、その……。わかった。説明するから落ち着け」
何とか恋を落ち着けようとしているようだが、及び腰だ。
昨夜の記憶は曖昧だが、やけに強気な態度だったような気がする。
そして何より、めちゃくちゃエロかったような気がするが、今は関係ないので触れないでおく。
口調も俺様そのものだったし、結構強引そうなのに、案外押しには弱いのかもしれない。
恋は、猪突猛進ながらも、案外冷静にそんなことを分析していた。その結果。
ーーこれならいける。もう一押!
「ねえ、カレン。どういうことか今すぐ説明して。じゃないと絶交するからッ!」
恋は、強気な発言を繰り出していた。
カレンは唖然としたようだったが、すぐに軽い突っ込みを返してくる。
「……絶交って、子供かよ」
冗談だと捉えられたくなくて、恋はすかさず念を押す。
「本気だからッ!」
「わかった。わかったからとにかく落ち着いてくれ」
それが功を奏し、あの後シャワーと着替えを済ませた恋は、ホテルの豪華な朝食を堪能しつつ、テーブルを挟んだ真向かいに座るカレンから、諸々の説明を受けているところだ。