偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
もし仮にそうだとしても、男性恐怖症が完全に治った訳じゃない。
どうしてかは不明だけれど、カレンには平気だったというだけで、このまま克服できるという確証もないのだ。
その点においては、カレンにもいえることだと思うし。
だったらプロポーズされたからといって、即刻OKなんてできる訳がない。
ましてやカレンのことを好きかどうかもわからないのだ。男性恐怖症を克服するためにカレンを利用するような真似など言語道断。
ーー稀有で大事な親友であるカレンに対してそんな不誠実なこと絶対にできない。
もうこの時点で、カレンのことを特別な存在だと認識しているというのに、恋にはその自覚など全くなかったのだからしょうがない。
カレンに対して誠実でありたい。
ただただその一心で恋なりに言葉を選びいつつ、やんわりとお断りを入れたのだった。
「吃驚しすぎてどう反応すればいいかわからなくて……ごめんなさい。でも、私のことが好きだからプロポーズしてくれたって訳じゃないわよね。ずっとゲイだって思ってたんだし。だったらごめんなさい。私ーー」
だがその言葉は全てを言い終える前に、カレンによって遮られてしまう。
「待て。誤解するな。お互いの利益のための結婚。俺はその提案をしているだけだ」
これまた予想だにしなかった『利益』なんていう言葉が飛び出してきたために、恋はその場で再び固まってしまう。
そんな恋の胸はツキンという不可解な鋭い痛みを訴えていた。