偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました

「そんな簡単なもんじゃ」

「だったらこうしよう。俺は実家が経営する病院の後継者として、結婚して跡継ぎをもうけないとならない。そのために、恋には俺と結婚してもらう。その代わり、その報酬として、恋の男性恐怖症が克服できるよう協力させてもらうし、事故の相手から請求されている損害賠償も、全額肩代わりしてやる」

「そ、そんなことできないッ!」

「夫婦になるんだから、それくらい当然だろ。何より、これまでずっとゲイだと諦めてきた俺にとって、否、俺の家にとっては、それだけの価値があるんだ。こんな言い方はしたくなかったが。この提案断ったら、フラワーショップ可憐は売却することになるんじゃないのか?」

 最後には、どうにもならない厳しい現実を突きつけられてしまっては、返す言葉も見つからない。

「……うっ」

 ぐうの音も出ないとはこのことだろう。

< 49 / 124 >

この作品をシェア

pagetop