偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
これまでカレンには、父親が起こした事故の件でも話を聞いてもらっていた。
事故の相手がヤのつく職業だと思わせるような、見るからに柄の悪い人で、当初は車の修理だけで、怪我もなかったはずが……。
後になって、首が痛いだの背中が痛いだの言い始め、つい先日、顧問弁護士を通して、和解金として一千万円を要求してきた。
口に出すと脅迫に当たるようで、直接何かを言ってくることはないが、頻繁に店に訪れては、和解金を払わざるを得ないような雰囲気をチラつかせるのだ。
ただでさえ、柄の悪い輩が店に頻繁に顔を出すおかげで客足が途絶えているというのに。
断ったりすれば、嫌がらせはエスカレートするだろうし、どうなるのだろうかと、戦々恐々とする日々を送っていた。
まさかそのことで、こんなふうにカレンから結婚を迫られることになろうとは、今の今まで夢にも思っていなかったことだが。
どういう訳だか、嫌悪感は微塵も抱いていない。
親友として接してきた、この一年の間、培ってきた信頼関係ゆえだろうか。