偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
ーーそれでもいい。今は親友カレンとして、これからは、偽りだとはいえ、夫婦として一緒にいられるんだ。
同じ時間を共有していく中で、いつか本物の夫婦になりたい。
ーー否、絶対になってみせる。恋は俺がこの手で絶対に幸せにしてみせる。
「どうとでもいえ。けど、俺が幸せにしたら問題ないだろ」
思いの外熱が入ってしまった秀の言葉にも、文はいつものように、痛いところを突いてくる。
「あんたみたいなヘタレにできるのかしらねぇ。好きな女の子が傍にいるのに手さえつなげなかったようなヘタレに」
秀は、少しでも憂さを晴らそうと、目の前のウイスキーがなみなみと注がれたグラスをグイッと一気に煽った。
そんなことをしてみても、一向に晴れはしないが、そうでもしないとやってられないという心地だったのだ。
「うっさい。だいたいお前が女装なんてさせるのがいけないんだろうが」
「あら、彼女の体質を考慮すれば仕方ないでしょう。そのおかげで、女装したあんたには平気だってわかったんだし。感謝してほしいぐらいよ。お礼は、女装男子の実態調査でいいわよ」
「勘弁してくれ。知り合いにでも見られた日には、社会的に死ぬ」
「残念。あんた女装すれば可愛いから潜入できると思ったのに」
「……」
終いには、毎回こうだ。