偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
今日も職場である藤花総合病院の医局に姿を現せた青山に、仕事上がりに釘を刺していたのだが……。
青山はさも当然のことをしたまでだと言わんばかりの口吻で、今後も改める気はないようだった。
ーーまぁ、予想通りではあったが。こうなったら、もう後には引けない。前進あるのみだ。
いくら知らなかったこととは言え、若干の後ろめたさがないと言ったら嘘になる。だが済んだことを嘆いていてもしょうがない。
そう腹をくくっていた秀に、青山もそう促してくる。
『もう既に匙は投げられたのですから、坊ちゃまがそのまま娶られてはどうでしょう。そうなれば、藤堂家も安泰。お父様はもちろん、お母様も草葉の陰で喜ばれていることでしょう』
『他人事だと思って』
……とは言いながらも、それもそうだなと思い直す。
『他人事などとは心外でございます。私がどれほど藤堂家の繁栄を願っているか。おわかりでしょうに。あんまりでございます』
つい零してしまった秀の言葉に、青山が泣きそうな顔で嘆くのを尻目に、秀は恋のことを思い浮かべていた。
今は偽っていても、受け入れてはもらえたのだから、そのうちきっとーー。
ーーいいや、必ずこの手で恋のことを幸せにしてみせる。
そう胸の内でひっそりと誓いを立てて今に至る。