偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました

 秀からそのことを話してもらっているうち、いつしか青山は忽然と姿を消していて、秀とふたりきりになっていた。

 いつものホテルの部屋でなく、職場だと思うからだろうか。恋は妙な緊張感に見舞われてしまう。

 そんな恋の様子を秀は心配そうにジッと見つめてくる。

「恋? どうした? ぼうっとして。気分でも悪いのか? それとも、青山に何か気を害すことでも言われたのか?」
「へ!? いや別に、そういう訳じゃ」

 妙な緊張感のせいで、さっきから落ち着かないというのに、秀に指摘されたことで、恋の返答は裏返ってしまった。

 それを肯定だと勘違いしたようで、秀はスックと立ち上がり素早く歩みよってくる。

 気づけば身を屈めた秀の顔が目前に迫っていた。

 それだけではない。

 秀は脳外科医専用の爽やかな濃紺のスクラブを着込んでいる。その上に清潔感溢れる白衣を纏っている。

 そのせいかなんなのか、その姿は途轍もなく似合っていて、心なしか、眩いほどに輝いて見えてしまう。

 そのせいで心は落ち着かないし、胸が締め付けられるほどドキドキとしてどうしようもない。

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