偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
ーーいやいや、休憩中だからって言っても職場だし。気にするに決まってる! それに変態呼ばわりされてゾクゾクするって、本物の変態みたいなんですけど。
心の中では威勢よく毒づいているくせに口に出す余裕がない。
秀が何かを話すたびに、熱い吐息が首筋を掠める。その都度、反射的に身体がビクビクッと反応してしまうものだから、恥ずかしくてどうしようもない。
それに呼応するように、胸の高鳴りまでもが加速する。
暴れ出した心臓が口から飛び出すのではないかと思うほどドキドキしっぱなしだ。
これ以上続けば心臓がもたない。
恋の心臓が限界に達しようとしていたすんでのところで。
「恋とこうしていると落ち着くんだよな。いい匂いだし抱き心地もいいし。こうしていると時間が経つのも忘れる」
恋の肩にスリスリ頬ずりするように顔を乗っけた秀が穏やかな声音で囁くような甘い呟きを零した。
同時に、お腹に回していた腕にぎゅっと力を込められる。
あたかも閉じ込めてもう離さないと言わしめられているように感じてしまう。
また、秀と密着しているところからジンと甘やかな痺れと熱とが生じて身体の深部に染み渡ってゆく。
見えない鎖に身も心も雁字搦めにされて囚われてしまったかのような気がしてくる。