偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました

まさかのハピエン!?


 不安しかない花嫁修業ではあったが、鬼畜眼鏡という異名を持つ切れ者執事・青山の、懇切丁寧な指導の下恋は仕事に邁進していた。

 受付業務とは違って、医師である秀の、スケジュールの調整から、日々の忙しさから滞りがちになってしまう細々とした事務処理に始まり、業務内容は多岐にわたる。

 個人病院とはいえ、様々な症例に合わせた治療法や術式を日々最新のものに更新しておくためには、他の病院はもちろん、大学病院との連携も密にしておく必要があるのだとか。

 他にも、後継者である秀には、政財界やありとあらゆる分野の、著名人との繋がりも強固なものにしておく必要があるらしい。

 今はまだ秀の父が実権を握っているが、結婚を機に、今後はそういう根回しも欠かせなくなっていくんだとか。結婚式は感染症の懸念がある時節柄親族だけで行うが、記念品と一緒に直筆の挨拶状を送らなければならない。

 幸いなことに、恋は硬筆検定一級の腕前だったので、代筆を依頼する必要もなく、秀をサポートする業務の傍ら、それらの準備にも励んでいた。

 正直、今時手書きでなくてもいいのでは、と何度も思ったし、投げ出したくなったりもしたのだが。

 その間も、秀からの治療と称しての甘やかなスキンシップは続いていて、何より秀が医師として患者と真摯に向き合っている姿にますます惹きつけられていった。

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