偽りのはずが執着系女装ワンコに娶られました
まさか、酔った勢いで言ったことを覚えてくれているとは思いもしなかった。
こんなサプライズのようなことをされたら、今度こそ勘違いしてしまいそうだ。
そんな恋の心情にトドメでも刺すかのような言葉が秀の口から紡ぎ出される。
「貸し切ったもののイベントがあるとかで二時間が限度だったけどな」
ーーもしかしなくても、私のために、わざわざ貸し切ってくれたんだ。そんなことされたら、もう。
恋が今度こそ降参しかけたところに、秀の急かす声がして。
「時間がもったいない。ほら、行くぞ」
しっかりと手を繋ぎとめられた恋は秀に手を引かれるままに足を踏み出していた。
「あっ、ちょっと。待ってよ、秀ッ!」
どうやら本当に貸し切ってくれているようで、小走りで駆けていく秀と恋、従業員らしき人以外には行き交う人は誰もいない。