【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
「わたくし、昨日ブラントさまと一緒に見た舞台で、女性には変身願望と言いましょうか――――普段の自分とは別人になりたい時があるということを実感しましたの。オシャレをすることの楽しさも」


 自分が自分じゃなくなったような感覚は、幸せを増幅させてくれる。ほんの少しの間、辛い日常を忘れさせてくれる。

 それに、ブラントと出かけるために化粧をしたり、着飾ったりすることは、ラルカが想像していた以上に楽しかった。

 髪飾りを贈られ、それを付けた自分を鏡で眺める楽しさもそう。
 これは、メイシュに強制的に着飾らされていた頃には気づくことのできない喜びだった。

 自分自身が楽しかったことを。
 嬉しかった経験を。
 誰かと、確かな形で共有したい。

 上手くいけば、メイシュとの苦々しい思い出も、温かいものに変えることができるのではないだろうか――――そう思うと、興奮で胸が高鳴る。


「普段とは違う装いをすることで、皆様に非日常感を味わっていただけるんじゃないかと思っておりますの。
それに、これなら小さなお子様から、その親御さん世代まで楽しんでいただけそうだなぁと。足を運んでいただけそうだなぁと思いましたの」


 今回は、子どもたちのためのイベントで、富裕層や中間層たちの関心や支援資金を集めることが目的だから、ラルカの提案はターゲット層にもバッチリ合う。


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