【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
「そんな……わたくしはブラントさまに対して、なんて酷いことを」


 他に想い人がいる人に、仮初の婚約を結ばせてしまったなんて。

 しかも、その相手はエルミラ(想い人)の側近であるラルカだ。婚約の事実は隠し立てできないし、エルミラに要らぬ誤解を与えてしまう――――少なくとも、ブラントはそう感じたのではなかろうか?

 一人愕然としていると、アミルがポンと肩を叩く。


「――――気づいたのなら、早く応えてやると良い。あいつは優しい男だ。君自身のためにも、結論を出すのは早いほうが良いだろう?」 


 アミルとしては、ラルカがブラントの想いに――――ラルカ自身の想いに気づいてほしいと、発破をかけたつもりだった。
 ラルカの願いは最早、自由に生き、仕事を続けることだけでなく、ブラントと共に生きることに変わっているのだと、自覚させてやりたかった。

 妃として望まれることよりも、ブラントとの婚約を選んだ時点で、アミルは己の目論見が成功したと思っていた。


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