【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
ここであっさり引き下がっては、ブラントに会うことができなくなる。
ラルカはずいと身を乗り出し、騎士たちを必死に見上げた。
「あの、ソルディレンさまは――――ブラントさまはご在室でしょうか? わたくし、ブラントさまに書類を託したいのですが……」
「え? ブラント、ですか?」
「はい。エルミラさまにも彼に渡すようにと強く言付けられておりまして……」
ようやくそこで騎士たちは、ラルカの来訪目的に気づいたのだろう。困ったように微笑みつつ、互いに顔を見合わせる。
「かしこまりました。すぐに呼んで参りますので、少々お待ちいただけますか?」
「はい、お願いいたします」
良かった。なんとか意図が伝わったようだ。
ホッと胸を撫で下ろしながら、ラルカは息を整える。
取次の騎士が執務室に入って僅か数秒後のこと。バン! 大きな音を立てて扉が開いた。
「ラルカ!」
ブラントだ――――そう思う間もなく、ラルカは勢いよく抱きしめられる。
ふわりと香る汗の香り。いつもきっちりと揃えられたヘアスタイルや服装も、今日はどこか草臥れていて精彩を欠いている。
けれど、何故だろう。
ラルカはそんな彼のことを愛おしく思った。
ブラントをギュッと抱き返しつつ、胸に顔を埋める。心地よい心臓の音が聞こえ、酷く安心した。
ラルカはずいと身を乗り出し、騎士たちを必死に見上げた。
「あの、ソルディレンさまは――――ブラントさまはご在室でしょうか? わたくし、ブラントさまに書類を託したいのですが……」
「え? ブラント、ですか?」
「はい。エルミラさまにも彼に渡すようにと強く言付けられておりまして……」
ようやくそこで騎士たちは、ラルカの来訪目的に気づいたのだろう。困ったように微笑みつつ、互いに顔を見合わせる。
「かしこまりました。すぐに呼んで参りますので、少々お待ちいただけますか?」
「はい、お願いいたします」
良かった。なんとか意図が伝わったようだ。
ホッと胸を撫で下ろしながら、ラルカは息を整える。
取次の騎士が執務室に入って僅か数秒後のこと。バン! 大きな音を立てて扉が開いた。
「ラルカ!」
ブラントだ――――そう思う間もなく、ラルカは勢いよく抱きしめられる。
ふわりと香る汗の香り。いつもきっちりと揃えられたヘアスタイルや服装も、今日はどこか草臥れていて精彩を欠いている。
けれど、何故だろう。
ラルカはそんな彼のことを愛おしく思った。
ブラントをギュッと抱き返しつつ、胸に顔を埋める。心地よい心臓の音が聞こえ、酷く安心した。