【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
「――――ところで、最近ラルカ嬢は、結婚相手を探しているそうですね」

「……! どうしてそのことをご存知なのですか?」


 けれど、あまりにも思いがけないことを言われ、ラルカは目を丸くする。


「もしかして、噂になっているのですか? わたくしが、結婚相手を探していると」

「いや、それは……」


 騎士は思わず口ごもる。

 なんと答えよう――――しばし思い悩んでいたものの、彼はやがて、ラルカの様子がおかしいことに気がついた。
 顔は青褪め、眉間にしわが寄っている。いつも笑顔の彼女らしくない反応だ。


「……ラルカ嬢?」

「わたくし、嫌なのです」

「え?」


 騎士が驚いている様子が見て取れる。
 けれどラルカは、己を止めることができなかった。


「結婚なんてしたくない。これからもずっと仕事を続けていきたい。
だからわたくしは、ずっと独身でいたいのです。
それなのに、姉が認めてくれなくて」


 ずっとずっと、どこかに吐き出したかった。
 思いの丈を。苦悩を。
 誰かに聞いてほしいと思っていた。

 この人ならば、もしかしたら聞いてくれるかもしれない――――笑って聞き流してくれるかもしれない――――そんな風にラルカには思えた。


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