【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
36.イベント当日(4)
ラルカが連れ込まれたのは、街の隅にある廃屋だった。
腕がきつく縛られており、キシキシと痛む。
建物の所々にがたが来ているらしく、歩くと腐った床板が軋む。酷くジメジメしており、カビ臭い。雨漏りの水溜りのせいで、ラルカのドレスはドロドロになってしまった。
天井から光が漏れ入るのが唯一の救いだが、あと数時間もすれば夜がくる。暗闇に怯えるのは時間の問題のように思えた。
「ねぇ、貴方たちは一体、どうしてこんなことを? こんなところに勝手に入っては危ないわよ? お家の人は? どこに居るの?」
努めて冷静にラルカが尋ねる。
けれど、一番大きなリーダー格らしい少年が、嘲るようにラルカを笑った。
「あんた馬鹿なの? 俺たちを心配する大人が居ないことぐらい、見りゃ分かるだろう?」
声変わりしきっていない、掠れた低音。
彼の隣には数人の子供たちが居て、皆ラルカのことを睨んでいる。
ボロボロの洋服。もうすぐ冬だというのに、薄布から覗く体は痩せていて、身長も低い。ちっとも梳かれていないらしい髪は絡まり倒し、肌はくすんで血色が悪い。裕福でないことは直ぐに見て取れた。
腕がきつく縛られており、キシキシと痛む。
建物の所々にがたが来ているらしく、歩くと腐った床板が軋む。酷くジメジメしており、カビ臭い。雨漏りの水溜りのせいで、ラルカのドレスはドロドロになってしまった。
天井から光が漏れ入るのが唯一の救いだが、あと数時間もすれば夜がくる。暗闇に怯えるのは時間の問題のように思えた。
「ねぇ、貴方たちは一体、どうしてこんなことを? こんなところに勝手に入っては危ないわよ? お家の人は? どこに居るの?」
努めて冷静にラルカが尋ねる。
けれど、一番大きなリーダー格らしい少年が、嘲るようにラルカを笑った。
「あんた馬鹿なの? 俺たちを心配する大人が居ないことぐらい、見りゃ分かるだろう?」
声変わりしきっていない、掠れた低音。
彼の隣には数人の子供たちが居て、皆ラルカのことを睨んでいる。
ボロボロの洋服。もうすぐ冬だというのに、薄布から覗く体は痩せていて、身長も低い。ちっとも梳かれていないらしい髪は絡まり倒し、肌はくすんで血色が悪い。裕福でないことは直ぐに見て取れた。