【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
 ラルカとブラントの婚約から一年半。二人は今、ラプルペ家の領地へと向かっている最中だ。
 ラルカを己の人形のように扱っていたメイシュの暮らす場所。これまでラルカは、ありとあらゆる理由をつけて、領地に帰ることを拒んでいた。外せない仕事が入ったと言ってみたり、熱が出たと嘘をついてみたり……本当にあらゆる偽装工作を行ってきたのだ。


「けれど、今回はブラントさまが一緒ですし」


 ラルカはそう言って無邪気に微笑む。あまりにも無自覚かつ強力な攻撃。心臓を撃ち抜かれたような心地を覚えつつ、ブラントは胸を押さえた。


「姉さまもあれから、本当に変わられましたから」


 ラルカがそう言って目を細める。ブラントは「そうですね」と返事をした。


 今回忙しい合間を縫ってラルカの故郷へ向かうことになったのには、きちんとした理由がある。

 一つは婚約者であるブラントをラルカの父親に紹介すること。
 そしてもう一つは、メイシュが子を出産したからだ。


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