【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
(なるほど。だからわたくしが婚約者に丁度良かったのですね)
ブラントは、今はまだ結婚して身を固めたくないと言っていた。おそらく彼は,一人の女性に縛られたくないタイプなのだろう。
二人が結ぶのはあくまで仮初の婚約。ラルカとしては、程よい時点で婚約を解消したいと考えているし、浮気をしたところで文句を言うことも、揉める心配もない。
互いの利害が一致している――――そう思うと、少しだけ気持ちが楽になる。ラルカはそっと目元を和らげた。
「では、貴女のお姉さまには僕の方からお話をして、婚約の段取りを進めさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん。わたくしからも姉に話をしようと思っております。どうぞ、よろしくお願いいたします」
とても嬉しそうなラルカの微笑みに、ブラントは眩しげに目を細める。
「ラルカ」
「…………はい?」
唐突に名前を呼ばれ、ラルカはそっと首を傾げる。
ブラントは困ったように微笑むと、ラルカの頭をそっと撫でた。
ドキッ、と小さくラルカの胸が疼く。
(何故でしょう? ただ撫でられただけなのに)
まるで、全身をギュッと包み込まれたかのような感覚が走る。
どこか熱っぽいブラントの瞳。胸のあたりに広がる甘ったるさを逃しつつ、ラルカはそっと微笑む。
「よろしく、ラルカ。僕の婚約者殿」
ブラントはそう言って手のひらを差し出す。どこか不敵な笑み。ラルカはクスクスと笑い声を上げながら、彼の手を握る。
かくして二人は、仮初の婚約に向けて動き出したのだった。
ブラントは、今はまだ結婚して身を固めたくないと言っていた。おそらく彼は,一人の女性に縛られたくないタイプなのだろう。
二人が結ぶのはあくまで仮初の婚約。ラルカとしては、程よい時点で婚約を解消したいと考えているし、浮気をしたところで文句を言うことも、揉める心配もない。
互いの利害が一致している――――そう思うと、少しだけ気持ちが楽になる。ラルカはそっと目元を和らげた。
「では、貴女のお姉さまには僕の方からお話をして、婚約の段取りを進めさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん。わたくしからも姉に話をしようと思っております。どうぞ、よろしくお願いいたします」
とても嬉しそうなラルカの微笑みに、ブラントは眩しげに目を細める。
「ラルカ」
「…………はい?」
唐突に名前を呼ばれ、ラルカはそっと首を傾げる。
ブラントは困ったように微笑むと、ラルカの頭をそっと撫でた。
ドキッ、と小さくラルカの胸が疼く。
(何故でしょう? ただ撫でられただけなのに)
まるで、全身をギュッと包み込まれたかのような感覚が走る。
どこか熱っぽいブラントの瞳。胸のあたりに広がる甘ったるさを逃しつつ、ラルカはそっと微笑む。
「よろしく、ラルカ。僕の婚約者殿」
ブラントはそう言って手のひらを差し出す。どこか不敵な笑み。ラルカはクスクスと笑い声を上げながら、彼の手を握る。
かくして二人は、仮初の婚約に向けて動き出したのだった。