【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
「実は、僕の同僚たちも、こぞってラルカを狙っていたのです。皆がラルカとの結婚を望んでいました。
他の男にラルカをとられたくはない。親しくなるためのきっかけがほしい――――そんな時、ラプルペ家が結婚相手を探していると知りまして。
居ても立っても居られず、すぐに彼女に想いを告げました。僕と結婚してほしい、と。
ですから、ラルカが僕の想いを受け入れてくれて本当に良かった。心から幸せです」


 ブラントはそう言って、眩しげに目を細める。
 メイシュは感極まったように、瞳を輝かせた。


「まぁ……! ソルディレンさまにそんな風に思っていただけるなんて! 本当に光栄ね、ラルカ」

「え、ええ。姉さま」


 応えつつ、ラルカの顔が更に真っ赤に染まっていく。

 偽りの言葉。偽りの笑顔。
 そうと分かっているのに、ラルカの胸がドキドキと高鳴る。


「光栄なのはこちらの方です。ラルカは本当に素晴らしい女性ですから。貴女にとっても、さぞや自慢の妹なのでしょうね」


 ブラントが言えば、メイシュは勢いよく身を乗り出す。


「それはもう……! どこに出しても恥ずかしくない、自慢の妹ですわ! 幼い頃から本当に本当に可愛くて。領民たちから女神のように崇められていましたのよ! 彼等も、ラルカとソルディレン侯爵令息様との縁談がまとまったと知ったら、さぞ喜ぶことでしょう! 本当に鼻が高いわぁ!」


 興奮した面持ちのメイシュに、ラルカは思わず俯く。
 恥ずかしい――――そんな風に思うが、はっきりと口に出すわけには行かない。ここで不興を買えば、メイシュの王都滞在が長引いてしまいかねないからだ。


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