【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
「だけど良かった。無事に婚約を結べて、ホッとしました」
ブラントはラルカの手を握ると、柔らかく微笑む。
「ええ! ブラントさまには本当に、なんとお礼を申し上げたら良いか……!」
「お礼だなんて、そんな。これは互いの目的を叶えるために結んだ婚約です。貸し借りなし。今後は『申し訳ございません』と『ありがとう』は禁止でいきましょう」
そう言ってブラントは首を小さく横に振る。
「まぁ……! だけどそれでは、わたくしの気が済みませんわ。わたくしが受ける利益のほうがずっと大きいですし、せめて『ありがとう』ぐらい言わせてください」
ぐいっと身を乗り出せば、ブラントはほんのりと頬を染める。
「しかし……」
「良いですか、ブラントさま。わたくしは貴方がいなければ、姉の望むとおりすぐに結婚をし、大好きな仕事を辞め、貴族の夫人としての望まぬ毎日を過ごさねばなりませんでした。わたくしはそんな人生はごめんです。本当に、嫌でたまらなかったのです」
毎日毎日、好みでないドレスを着て、飲みたくもないお茶を何杯も飲み、他人の悪口や噂話に終止する。そこにはラルカの意思や感情は全く必要とされない。
生きているのか、死んでいるのかすらよくわからない、人形のような人生。
何故だろう。
貴族というだけで――――女性だと言うだけで、生き方が酷く制限されてしまう。
活き活きと仕事をして何が悪い? 結婚をしないことの何が悪い?
メイシュに抑圧された分だけ、ラルカは強く思ってしまう。
ブラントはラルカの手を握ると、柔らかく微笑む。
「ええ! ブラントさまには本当に、なんとお礼を申し上げたら良いか……!」
「お礼だなんて、そんな。これは互いの目的を叶えるために結んだ婚約です。貸し借りなし。今後は『申し訳ございません』と『ありがとう』は禁止でいきましょう」
そう言ってブラントは首を小さく横に振る。
「まぁ……! だけどそれでは、わたくしの気が済みませんわ。わたくしが受ける利益のほうがずっと大きいですし、せめて『ありがとう』ぐらい言わせてください」
ぐいっと身を乗り出せば、ブラントはほんのりと頬を染める。
「しかし……」
「良いですか、ブラントさま。わたくしは貴方がいなければ、姉の望むとおりすぐに結婚をし、大好きな仕事を辞め、貴族の夫人としての望まぬ毎日を過ごさねばなりませんでした。わたくしはそんな人生はごめんです。本当に、嫌でたまらなかったのです」
毎日毎日、好みでないドレスを着て、飲みたくもないお茶を何杯も飲み、他人の悪口や噂話に終止する。そこにはラルカの意思や感情は全く必要とされない。
生きているのか、死んでいるのかすらよくわからない、人形のような人生。
何故だろう。
貴族というだけで――――女性だと言うだけで、生き方が酷く制限されてしまう。
活き活きと仕事をして何が悪い? 結婚をしないことの何が悪い?
メイシュに抑圧された分だけ、ラルカは強く思ってしまう。