【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
9.見えない糸
二人の婚約から二日後、メイシュが領地へ帰ることになった。
「姉さま、忘れ物はない?」
「大丈夫よ。ちゃんと確認したわ。
ラルカったら、心配性ねぇ。んもう、可愛んだから!」
メイシュはそう言って、ラルカに抱きつく。
けれど、ラルカが心配しているのはメイシュのことではない。完全に保身のためだ。
(絶対に戻ってきちゃダメよ、姉さま)
早く出発してほしい――――そう心から願いつつ、ラルカは必死に本音を隠す。心とは裏腹に、ニコニコと笑顔を浮かべ続けた。
「良い、貴方たち? 私がいなくなってからも、ラルカのことをきちんと世話するのよ。少しでも手を抜いたら許さないんだから」
「はい、メイシュ様」
使用人たちが一斉に頭を下げる。皆一様に緊張しているのがわかった。
「そんな、姉さま。わたくしももう大人です。婚約だってしたのですから、姉さまがお帰りになったあとも大丈夫。きちんと生活いたしますわ」
ラルカはそう言ってニコリと微笑む。
そもそも、姉が領地に戻ったらすぐに、ラルカは寮に移り住む予定だ。使用人たちには口裏を合わせてもらうつもりでいるのだから、念押しなんてしないでほしい。
というか、今後はラルカのことなど一切気にしないでほしいのだが。
「姉さま、忘れ物はない?」
「大丈夫よ。ちゃんと確認したわ。
ラルカったら、心配性ねぇ。んもう、可愛んだから!」
メイシュはそう言って、ラルカに抱きつく。
けれど、ラルカが心配しているのはメイシュのことではない。完全に保身のためだ。
(絶対に戻ってきちゃダメよ、姉さま)
早く出発してほしい――――そう心から願いつつ、ラルカは必死に本音を隠す。心とは裏腹に、ニコニコと笑顔を浮かべ続けた。
「良い、貴方たち? 私がいなくなってからも、ラルカのことをきちんと世話するのよ。少しでも手を抜いたら許さないんだから」
「はい、メイシュ様」
使用人たちが一斉に頭を下げる。皆一様に緊張しているのがわかった。
「そんな、姉さま。わたくしももう大人です。婚約だってしたのですから、姉さまがお帰りになったあとも大丈夫。きちんと生活いたしますわ」
ラルカはそう言ってニコリと微笑む。
そもそも、姉が領地に戻ったらすぐに、ラルカは寮に移り住む予定だ。使用人たちには口裏を合わせてもらうつもりでいるのだから、念押しなんてしないでほしい。
というか、今後はラルカのことなど一切気にしないでほしいのだが。