【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
(お化粧なんて、しなくて良いのに)
感情を押し殺し、時間が過ぎるのをひたすら待つ。
甘ったるい化粧品の匂いが、以前よりもずっと嫌いだと思った。
嫌だと伝えることすら面倒で、やがてラルカは何も言わなくなってしまう。
貴族の令嬢である以上、ある程度の制約は当然だ。ラルカとて、そんなことはわかっている。
けれど、彼女が置かれた状況は、とても普通の令嬢のそれではなかった。
監獄ぐらしの方がマシではないかと思えるほど、あらゆる行動を強制、制限されている。
自分という人間すべてを否定され、少しずつ 少しずつ消去されていくかのような感覚。
メイシュは既に居ないのに、ラルカはこれまでよりも雁字搦めにされたような気がしていた。
そんな中でも、仕事を続けさせてもらえたことは、本当に奇跡に近かった。
「どうしたの、ラルカ? 最近元気がないじゃない?」
エルミラが尋ねる。
「そ、れは……そんなことは…………」
ないとは言えない。
ラルカは軽く目を瞠り、それから頬を真っ赤に染めた。
(わたくしは、一体何をしているのでしょう?)
職場は今のラルカにとって、唯一自分らしく居られる場所。
そんな大切な場所で、エルミラの信頼を失うような真似をした自分が恥ずかしくて、それから情けなくてたまらない。
感情を押し殺し、時間が過ぎるのをひたすら待つ。
甘ったるい化粧品の匂いが、以前よりもずっと嫌いだと思った。
嫌だと伝えることすら面倒で、やがてラルカは何も言わなくなってしまう。
貴族の令嬢である以上、ある程度の制約は当然だ。ラルカとて、そんなことはわかっている。
けれど、彼女が置かれた状況は、とても普通の令嬢のそれではなかった。
監獄ぐらしの方がマシではないかと思えるほど、あらゆる行動を強制、制限されている。
自分という人間すべてを否定され、少しずつ 少しずつ消去されていくかのような感覚。
メイシュは既に居ないのに、ラルカはこれまでよりも雁字搦めにされたような気がしていた。
そんな中でも、仕事を続けさせてもらえたことは、本当に奇跡に近かった。
「どうしたの、ラルカ? 最近元気がないじゃない?」
エルミラが尋ねる。
「そ、れは……そんなことは…………」
ないとは言えない。
ラルカは軽く目を瞠り、それから頬を真っ赤に染めた。
(わたくしは、一体何をしているのでしょう?)
職場は今のラルカにとって、唯一自分らしく居られる場所。
そんな大切な場所で、エルミラの信頼を失うような真似をした自分が恥ずかしくて、それから情けなくてたまらない。