【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
「ラルカ嬢が結婚⁉」
「お相手は誰なの⁉」
「まだ結婚に興味なさそうだと安心していたのに!」
同僚たちが騒ぐ中、エルミラがラルカの肩を抱く。ラルカはおずおずと顔を上げた。
「……ご存知だったのですね」
「当たり前じゃない。私を誰だと思っているの?」
ふん、と鼻を鳴らし、得意げに頬を染めるエルミラに、ラルカは深々と頭を下げる。
「ご報告が遅くなって、申し訳ございません」
「別に、謝ることじゃないわ。貴女が私に黙っていた理由だって何となく分かるもの。仕事を辞めたくないと思ってくれているのでしょう?」
「エルミラさま……」
当たらずとも遠からず。結婚のために仕事を辞めたくない――――それは、ブラントと出会うまでの間、ラルカの頭を悩ませていた内容だ。
けれど、本当のことを話すのは憚られる。ラルカは頭を下げ続ける。
「良い、ラルカ? 私は、一人で悩むぐらいなら相談してほしいと思っているの。だって貴女は、私の大切な女官だもの。誰よりも頼りにしているもの。まだまだ手放す気はなくってよ?」
エルミラが微笑む。
そのままのラルカをエルミラが必要としてくれている。
けれど、そんな言葉すら、今のラルカには届かない。
メイシュの操る糸がラルカを絡め取り、思考を、感情を少しずつ奪っていく。
瞳から涙がポロポロと零れ落ちる。
(誰か、助けて)
ラルカは声にならない叫びを上げる。エルミラが差し伸べた救いの手に気づかぬまま。
「お相手は誰なの⁉」
「まだ結婚に興味なさそうだと安心していたのに!」
同僚たちが騒ぐ中、エルミラがラルカの肩を抱く。ラルカはおずおずと顔を上げた。
「……ご存知だったのですね」
「当たり前じゃない。私を誰だと思っているの?」
ふん、と鼻を鳴らし、得意げに頬を染めるエルミラに、ラルカは深々と頭を下げる。
「ご報告が遅くなって、申し訳ございません」
「別に、謝ることじゃないわ。貴女が私に黙っていた理由だって何となく分かるもの。仕事を辞めたくないと思ってくれているのでしょう?」
「エルミラさま……」
当たらずとも遠からず。結婚のために仕事を辞めたくない――――それは、ブラントと出会うまでの間、ラルカの頭を悩ませていた内容だ。
けれど、本当のことを話すのは憚られる。ラルカは頭を下げ続ける。
「良い、ラルカ? 私は、一人で悩むぐらいなら相談してほしいと思っているの。だって貴女は、私の大切な女官だもの。誰よりも頼りにしているもの。まだまだ手放す気はなくってよ?」
エルミラが微笑む。
そのままのラルカをエルミラが必要としてくれている。
けれど、そんな言葉すら、今のラルカには届かない。
メイシュの操る糸がラルカを絡め取り、思考を、感情を少しずつ奪っていく。
瞳から涙がポロポロと零れ落ちる。
(誰か、助けて)
ラルカは声にならない叫びを上げる。エルミラが差し伸べた救いの手に気づかぬまま。