【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜

13.ラルカの部屋

 ブラントに手を引かれ、ラルカは二階へと上がった。


「こちらの部屋です。気に入っていただけると良いのですが」


 自信なさげに微笑みながら、ブラントが部屋の扉を開ける。
 けれど、彼の心配は完全なる杞憂。

 そこには、ラルカの理想の一室が広がっていた。


 温かな色合いの壁紙に照明。床板には、木材本来の色が活かされており、全体的に落ち着いた印象を受ける。

 深い藍色のシーツが張られた広々としたベッドには、天蓋は付いておらず、ゴテゴテしたフリルもない。

 デザインよりも座り心地が優先されたであろうソファは無地の布張り。その正面に置かれたテーブルも、シックで大人っぽく、ついつい腰掛けてホッと一息つきたくなる。

 飾り気のない鏡台、滑らかな生地に美しい刺繍の施されたカーテン、甘ったるい化粧の匂いが全くしないこと――――すべてがラルカの屋敷とは違っていた。


「どうでしょう? シンプルすぎるでしょうか?」

「いいえ! ブラントさま、いいえ! 本当に理想的なお部屋です!」


 ラルカは声を弾ませつつ、部屋の中をぐるりと見て回る。


「ひとまずこんな形で準備しましたが、これから貴女の好きなように変えていってください」

「まぁ……! 良いのですか?」


 既にラルカの理想を超越した一室ではあるものの、これまで散々メイシュの言いなりになっていたのだ。自由という言葉に、ラルカはついつい反応してしまう。


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