【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
 階下では、使用人たちが立ち並び、ラルカとブラントを出迎えてくれた。


 二人の到着を合図に、ダイニングルームに朝食が並べられていく。

 瑞々しいサラダに、よく熟したフルーツ。パンに、あっさりとした味わいのスープ。少食のラルカに合わせ、どれもブラントよりもほんの少しだけ小さい皿に、美しく盛り付けてある。さり気ない気遣いに、ラルカは心から感激した。


「昨夜の夕食もそうでしたが、本当に美味しいです……!」


 メイシュの意向で、朝からバターや肉の脂でコテコテした料理ばかり食べていたため、さっぱりとした朝食が体に優しい。食べきれない罪悪感にかられることもなく、心から朝食を楽しむことができる。

 おまけに、ブラントの屋敷で振る舞われる料理は、素材の味を存分に生かしたものが多いのも特徴で、何から何までラルカ好みだった。


「それは良かった。料理長には何か褒美を与えなければいけませんね」

「あら、褒美ですか?」

「ええ。貴女を喜ばせることができたのは彼のおかげですから。勲章ものの働きでしょう?」


 二人は顔を見合わせ、クスクスと笑う。

 ブラントとの会話は無理がなく、とても楽しかった。

 ラルカの話題といえば、殆どが仕事に関すること。
 男性は仕事の話を好まないとよく言うが、ブラントは常にニコニコと、ラルカの話を聞いてくれた。ともに王宮勤めをしているためか、肩肘を張る必要が一切ない。相槌が自然なためか、どんどん話が広がっていくのだ。


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