【電子書籍化】独身貴族になりたいんです!〜毒姉回避のために偽装婚約を結んだ人形令嬢は、エリート騎士に溺愛される〜
「――――そうですか。エルミラ殿下がそんなことを」

「ええ! 是非子どもたちと直接交流を持ちたいと仰っていて。それから、チャリティイベントを開いて、子どもたちのための資金に使いたいんですって! わたくし、今から自分に何ができるか、考えていますの」


 ラルカは言いながら、エルミラとのやり取りに思いを馳せる。
 内容はまだまだ漠然としているが、子どもたちが楽しめて、貴族たち富裕層が自然とお金を落としたくなるものにしたいと二人で話している。実現する日が楽しみだ。


「ラルカは本当に仕事熱心ですね」


 ブラントがそう言って目を細める。
 けれど、ラルカはほんの少しだけ目を見開き、それから表情を曇らせた。


「……ええ。わたくし、仕事が本当に好きで、楽しくて。
エルミラさまにお仕えできて、心から嬉しく思っているのです。
それなのに、ここ最近のわたくしは、ちっとも仕事に集中できずに居て――――駄目ね。殿下を呆れさせてしまったわ。
もう、何もかも遅いのかも――――わたくしはもう、エルミラさまの信頼を取り戻せないかもしれません」

 
 どんなに後悔したところで、過ぎた時間は戻らない。悔しい――――ラルカは静かに唇を噛んだ。


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