【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。
■プロローグ
「アユリ」
優しく私の名前を呼ぶと、夫であるレイヤは私の髪を優しく撫でていく。
「……レイヤ?」
「君は、本当に素敵だね」
レイヤからもらう愛の言葉が、こんなに嬉しいものだと知ったのは、一体いつだろう。
私たちが結婚してからもう二年になるけど、レイヤが私の夫になってから、レイヤは私を大切にしてくれているような気がする。
政略結婚なのに、結婚をイヤがる様子もなかった。
でも一つだけ気がかりなのはーーー。
「アユリ、明日の夜空けておいて」
「え? どうして?」
「明日の夜は、外で食事をしよう。いいお店を見つけたんだ」
レイヤのこうやって笑う顔がもしかしたら見れなくなるのではないか。
そう思った時、どこかで胸がチクリと痛むような気がした。
「うん、分かった。 楽しみにしてるね」
精一杯の笑顔を見せた私だけど、私は知っている。
レイヤには、私の他に想い人がいることを。
それを偶然知ってしまった日から、私の心はずっとザワついている。
でも私は、その想い人が誰なのかを知らない。 だからこそ、不安で仕方ない。
私はレイヤと、これから夫婦としてやっていけるのだろうか。
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