【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。
ジャケットを羽織るレイヤのその背中を、私は「行ってらっしゃい」と見送る。
「アユリ」
「ん……?」
首を傾げる私に、レイヤは「帰る時、また連絡する」と私の頭をぽんと撫でる。
「うん。 待ってるね」
笑顔を向けると、レイヤは「じゃあ行ってきます」と玄関のドアを開ける。
レイヤの姿を見送った私は、そのままリビングへと戻り、フローリングをワイパーでかけていく。
レイヤはいつも「部屋がキレイだね」と褒めてくれるから、掃除するのが楽しい。
疲れて帰ってきたレイヤを、キレイな部屋で出迎えたいという私の気持ちを素直に受け取ってくれるレイヤに、私は感謝しかない。
妻として当然のことだけど、やっぱり感謝されると嬉しいものだなって思う。
レイヤは本当に優しくて、いい夫だ。私たちは政略結婚だけど、夫婦として楽しく暮らしている。
レイヤと結婚したことを、後悔してる訳じゃない。 でも時々、私の中に不安という感情が渦巻いている。
レイヤの想い人という、不安な感情が……。
だからどうしても、頭の中からそれが抜けない。思い出す度に、胸が疼いて苦しくなる。
私を愛してほしいなんて、そんなこと考えている。