【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。


「ごめん、アユリ」
 
 俺がアユリの手を握り直すと、アユリは「え……?」と辛そうな顔で俺を見る。
 
「このことを話したら、アユリはきっと傷付くと思った。……だから、ずっと言えなかった」

「……ううん。辛いこと、話させてごめんね」

 アユリのこんなに悲しそうな顔を見るのは、始めてかもしれない。

「確かに……アユリの言うとおりかもしれないな」

「……え?」

「俺はずっと、心のどこかで後悔していたのかもしれない。彼女のことがあったから」

 アユリには笑っていてほしいって、ずっとそう思ってる。 だから余計な心配はかけたくなかった。

「でも彼女のことがあって落ち込んで、辛かった時、俺は君と出会った」

 アユリが俺の人生を変えてくれたことは、間違いないんだ。アユリがいなかったら、俺はきっと今頃幸せな道を歩んではいなかっただろう。

「……アユリ、俺と出会ってくれてありがとう。君は俺にとって、とても大切な人になった」

 俺がアユリにそう伝えると、アユリは再び涙を流し、「そう、思えたなら……良かった」と笑った。
 俺はそんなアユリを優しく抱きしめ、「俺は君を愛してる。……ずっとずっと、この先も愛してる」と伝えた。
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