【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。


 お風呂から上がりパジャマに着替えて寝室へと戻ると、レイヤは誰かと電話しているようだった。

「……ああ、分かってる。忘れてないよ」

 忘れてない……? 一体、なんのことなんだろう……?

 思わずドアの前で立ち止まり、電話越しの会話を聞こうとしてしまう。
 ダメだって分かっているのに、そこから動けそうにない。

「……忘れられる訳、ないだろう」

 忘れられる訳がないって……なに? それ、なんのこと?
 もしかして……。その【想い人】のことなの……?

「俺にとってアイツは……今でも大事な人だ」

 その言葉を聞いてすぐ、私は悟った。
 やっぱりその言葉は、想い人のことを言っているんだって分かって、胸がぎゅっと締め付けられた。

「……っ」

 レイヤにとっての大事な人……。それは多分、私のことじゃない。
 私ではなくて、紛れもなく他の人のこと。

 私はレイヤに、思われてなんてなかった。ただ政略結婚しただけの、戸籍上の妻。
 この先私は、レイヤに思われることはないし、愛してもらうこともないんだ……。

「……言える訳ないだろ。 アユリには心配をかけたくない」

 その言葉を聞いてしまった私は、ただ苦しかった。
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