【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。
「お、アユリ、風呂出たのか」
「……う、うん」
私はどんな態度でレイヤと接すればいいのだろう。 全く分からない。
あんな話を聞いてしまった今、いつもみたいな態度ではいられそうにない。
こんな時、人は冷静でいられるものなのだろうか。 私は、きっと冷静でいられない。
「アユリ、どうした?」
「え?……あ、ううん。なんでもない」
レイヤには、知られたくない。あんな話を聞いてしまったなんて、知られたくない。
そしたら私は、レイヤとはもう一緒にいられなくなってしまうかもしれない。
……そう思うだけで、怖くなった。
「アユリ、なんか顔赤くないか?」
「え……そうかな」
「もしかして、のぼせたか?」
それでも私は、私のおでこに手を当ててくるレイヤの手を振り払うことなんて出来なかった。
レイヤは私の夫だから、私が大好きな人だから……。そんなこと、出来っ子ない。
どうして言えないんだろう。 レイヤが本当に好きな人が誰なのか、なんで聞けないんだろう。
でもそれは多分、私が臆病だから。
「アユリ、今日は早く寝よう」
「うん……そうだね」
レイヤのことが大好きだからこそ、私は結局臆病になる。