【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。
「アユリ、これ可愛くないか?」
「どれ……?」
レイヤが嬉しそうに私に微笑みかける。
「これだよ、これ」
「……ほんとだ。可愛いね」
可愛いデザインのキッチンマットを見つけたのか、レイヤは楽しそうに笑っていた。
「可愛いよな」
「うん、可愛い」
キッチンマットを眺めながら、レイヤは「せっかくだから、新しいの買うか。前のヤツ汚れてきてたし」と言っていた。
「そうだね。せっかくだから、新しいのにしよっか」
レイヤが私のことをどう思ってるのか、その答えなんて未だに分からない。
でも私は……レイヤのために頑張りたいって思ってる。もっといい妻になるために、もっといい女になるために、頑張らなきゃなって思った。
「色どっちがいい?アユリ」
「えー?そうだなあ……」
茶色にするか白にするか迷っていると、レイヤが「これ茶色、ラスト一個だってよ」とシールを指差した。
「え、ラスト一個なんだ?」
「みたいだな。 やっぱりここは、ラスト一個買っておくか」
レイヤの言葉に、私は「うん、そうしよっか」と答えた。
「貸して。俺が持つよ」
「あ、ありがとう」
レイヤは優しいからこそ、レイヤのことが分からない。