【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。
でも私のことを、心配してくれる。
「アユリの声が聞けて、ママは嬉しいわ」
「私だよ、ママ」
ママは私にとって、世界でたった一人のママだから。
ママの代わりになんていない。
「アユリ、レイヤくんにもよろしく言っておいてね」
「うん、分かったよ」
「あ、そうそう。実はね、アユリの大好きなパウンドケーキを焼いたんだけど、良かったら持っていこうか?」
ママからの一言に悩んだ私は、「ううん、私が取りに行くよ。ありがとう、ママ」と返事をする。
「ならレイヤくんと一緒に食べに来たら?」
「え?……あ、うん。聞いてみるね」
レイヤは一緒に来てくれるかな……。
「ええ。来る時は連絡しなさいね」
「分かった。 じゃあ忙しいから切るね」
電話を切った私は、スマホをテーブルに置きため息をつく。
「……はあ」
レイヤと私の仲は悪くない。夫婦として、ちゃんとやっていけてると思っている。
けどどうしても、レイヤの想い人のことが気になって頭から離れなくて、結局何も聞けないままでいる。
レイヤは私を抱く時、いつも髪の毛を優しく撫でてくれる。優しく微笑みかけてくれる。
「アユリ」と、名前を呼んでくれる。