【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。
「はい」
ホール担当のスタッフらしき男性が、予約したとされる席に案内してくれる。
「こちらでございます。 メニューがお決まりになりましたら、こちらのボタンでお呼びください」
スタッフがいなくなると、レイヤがメニューを開きながら口を開く。
「アユリ、ここ素敵な店だろ? ほら見ろよ、あっちに水槽が見えるだろ?」
レイヤが指差した方向を向くと、大きな水槽が見える。
「ほんとだ。……すごい、キレイだね」
呟いた私に、レイヤは「ほら、やっぱり喜んでくれた」と嬉しそうに笑う。
「わざわざ……水槽が見えるレストランにしてくれたの?」
「うん、まあね。 だってアユリ、元気なさそうだったから」
私は水槽に再び視線を向けると、「ごめんね。気を遣わせちゃった……かな」とレイヤに言った。
「いや、元気付けたいって思ったんだよ、俺が。だからアユリが気にすることない」
レイヤもレイヤなりに、気を遣ってくれたんだ。私が元気ないって思って……それで。
なんか、申し訳ないな……。
「……ありがとう、レイヤ」
レイヤは私にとっていい夫だ。こうやって優しい言葉をくれるから。
「さ、どれにする?」