【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。
「お邪魔しました。今日は本当にありがとうございました。ごちそうさまでした」
頃合いを見計り、私たちは帰宅することにした。
「またいつでも遊びに来てね。待ってるから」
「はい。ぜひ」
「じゃあね、ママ、パパ」
「気を付けて帰ってね」
玄関先でママとパパとお別れした後、私たちは二人で並んで歩き出した。
「楽しかったな、今日」
「うん、そうだね」
レイヤは私の手をぎゅっと握りながら、嬉しそうに私に微笑みかける。
「本当にアユリのお義母さんのパウンドケーキ、美味しかったな」
「美味しかったね。相変わらず料理上手だな」
そんな私に、レイヤは「アユリだって料理上手だろ?いつも何食べても美味いよ」と優しい言葉を掛けてくれる。
「……ありがとう」
レイヤの優しさに、たまに苦しめられる。
「アユリの作るパウンドケーキも食べてみたいな、今度」
「えっ? いや、私はそんなに上手くないと思うから!」
いきなりそんなこと言われると、困惑しかない。
「じゃあ今度作ってよ、俺のために。パウンドケーキ」
俺のために……か。
「……考えておくね」
「おう。楽しみにしてるから」
レイヤのために、か……。