【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。
私はその言葉に、頷くことしか出来なかった。
けどやっぱり、言えなかった。 想い人は誰?と、聞けなかった。
やっぱり私は……臆病者だ。
「俺、もうアユリのこと不安にさせたくない。……だから、何か思うことがあるなら言ってくれないか」
レイヤのその表情は悲しそうで、そして……心なしか辛そうにも見えた。
「……本当に、なんでもないよ。レイヤの言う通り、不安になっただけだから」
レイヤは「そっか」と安心したような表情を見せる。
「心配させちゃってごめんね。 さ、早く帰ろう?」
「……ああ」
レイヤ、私はあなたの妻だからこそ、私のことだけを見ててほしいなんて……それはわがままかな?
そのわがまま、叶えてほしいよ……。
お願いだから、どこにも行かないで。 私だけを見て、私だけを愛してほしい。
あなたの妻は私でしょ? 他の人を愛したりしないで。……って言えたら、どれだけ楽なんだろう。
「ねぇレイヤ、明日の朝ごはんクロワッサンでいい? 美味しいパン屋さん、友達に紹介してもらったんだ」
私は辛い気持ちを紛らわすかのように、レイヤにその話題を振った。
自分が悲しくならないように、明るく振る舞うために。