【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。
そんなに優しい言葉をかけられたら、私はレイヤと離れられなくなる。 ずっとずっと、離れられなくなる。
「あのさ、レイヤ……」
と声を漏らしたけど、私は結局悩んで「ううん……やっぱり何でもない」と言葉を返した。
「何だよ、どうした?」
レイヤはマグカップを置くと、私の顔を覗き込む。
「アユリ……君は俺に何か言いたいことが、あるんじゃないのか?」
レイヤのその表情が、何かを物語っているような気がした。
「……なんでそう思うの?」
そう問いかけたけど、レイヤは「いや……なんとなく」と答える。
「……何もないよ、言いたいことなんて」
そう答えた私は、今どんな顔をしているのだろう。 どんな表情を、しているのだろうか。
自分じゃ全然分からない。 私今、どんな顔しているのだろうか。
「私、レイヤといて幸せだから」
その言葉には、嘘なんて一つもない。確かに私は今幸せだ。
レイヤと結婚して幸せで、夫婦二人での生活は寂しくもない。そう思っている。
けど……やっぱりどこか、心のどこかでは寂しいって思っているのかな、私は。
「そうか。ならいいんだけど」
「心配させちゃって、ごめんね」