【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。
✱ ✱ ✱



 その日の夕方のこと。

「はい。もしもし?」

 珍しく弟から、私あてに電話がかかってきたのだった。

「あ、姉ちゃん?」

「カナト? どうしたの?」

 弟のカナトは、私より三つ下の弟だ。
 普段カナトはめったに電話してこないのに、珍しく電話がかかってきたからビックリしている。

「さっき、姉ちゃんの旦那、レイヤくんだっけ? 会社の近くで見かけたんだけどさ」

「え? レイヤを?」

 レイヤは今日確か、取引先の方と打ち合わせがあるって言ってたような……。
 それのことかな?

「でさ、なんか女と一緒だったんだけど。すごいいキレイな人と」

「……え?」

 キレイな女の人と……一緒だった?

「なんか……ちょっとあの二人、なんかあるんじゃないかって思ったんだよね」

 かと思ったら、カナトはそんなことを言い出す。

「え、なんかって……何?」

「なんか女の方、多分だけど姉ちゃんの旦那に気があるよ」

「えっ?」

 気があるって……。どういうこと?

「なんで、そう思うの?カナト」

 と、電話越しに問いかけると、カナトは「姉ちゃんの旦那が、その女のこと抱きしめてたの見たから」と答えた。
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