【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。


 俺の決意は変わらなかった。だからこそ、この決意は曲げてはいけない。
 素直にそう思えたのは、アユリという存在だ。

「……もちろんです。私も、あなたと同じ気持ちです」

 アユリの言葉は、まるで魔法みたいだ。俺の心を突き動かす何かが、アユリにはあったんだと思う。
 それはきっと、アユリにしかない何かだ。

「じゃあ……俺と結婚してくれるってことで、いいですか?」

「はい。私でよければ、お願い致します」

 やはりアユリには、白のワンピースと笑顔が似合う。大好きなアユリと結婚で、俺の人生は大きく変わった。
 かけがえのない大切な宝物、ずっと大切な人。それはアユリだ。



 だけど俺には、アユリにも言えていないことが一つあった。
 それは、俺の中でずっと忘れることの出来ない、出来事の中にあった。 
 一言で言うと、それはアユリにも秘密にしていることだ。

 それだけは絶対に、言ってはならない。言える訳はないんだ。
 そんなことを言ったら、アユリを悲しませてしまうと、分かっているから。
 アユリのことを愛していることは、変わらない。

 だけどアユリは、こんな俺を許してくれるだろうか……。
 いや、きっと許してはくれないだろう。
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