【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。

　アユリにもいつか、それを言わなければならない時が来るだろう。
　でも今は……何も言えない。　言える訳はないんだ……。

　アユリとの日々は宝物で、大切だからこそ、この幸せを……壊したくない。
　アユリが傷つくかもしれないと思うと、耐えられない。
　でも俺は、今も秘密を抱えたまま、生きているーーー。　

　そして俺たちは今、夫婦としての道を閉ざされるようとしている。
　そのことで、俺に責任があることは分かっているんだ。　でも……どうしたらいいのか分からない。

　そして俺たちの結婚に反対している人物がいたのを、俺は知っている。　それは、アユリの弟のカナトだ。
　カナトはアユリより三つ下の弟で、アユリのことを誰よりも心配している。俺のことも快く思っていないし、俺のことを信用するなと、アユリに吹き込んだらしい。
　
　事の発端は、俺の浮気疑惑が浮上したことにある。俺が仕事の取引先の女性と一緒にいる所を、カナトが目撃していたことをアユリに伝えてしまったことにある。
　俺がその女性を抱きしめている場面を目撃してしまったことで、カナトはそれを浮気だと誤解し、アユリに色々と伝えてしまったようだ。
　確かに、その女性から俺は好意を持たれていたけど。