【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。


 信じているとは言ってくれているけど、それもどうなのか分からない。
 事情を説明したくてカナトに電話を取り次いでもらって、カナトと話をしようとする俺だったけど、カナトは相当俺を嫌っているらしく、無愛想な態度を取っている。

「カナト、今回のことで心配させてしまって、本当に済まない」

「……で、浮気したことは謝罪した訳?姉ちゃんに」

 カナトはまだ、俺が浮気したと疑っているようだ。

「俺は浮気なんてしてないよ、カナト」

「あれをどう見たら浮気じゃないと言えるのか、分からないけど」

 カナトの声は冷静でかつ、すごく低い。

「本当だ。あれは取引先の人で、退職して海外に行くから働くのが最後になるから、抱きしめてほしいって言われただけなんだ」

「……そんな言い訳みたいな話、姉ちゃんは信じた訳?」

 カナトの問いかけに、俺は「アユリは、分かってくれた」と言葉を返す。

「へえ……。どうやって丸め込んだんだよ、姉ちゃんのこと」

「何言ってるんだ!そんなことはしていない」

 カナトはとことん、俺が嫌いなんだな……。電話越しでも分かる、その無愛想な態度。

「アンタ……なんでそんなに必死なんだよ。そこまで必死になる理由は、なんだ?」
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