【完結】離婚したいはずのお嬢様は、旦那様から愛の復縁を迫られる。
■第六章
「アユリ、俺たち子供を作らないか?」
レイヤのその一言が、私を変えたのは事実だった。
「子供が……ほしいの?レイヤ?」
私がそう聞いたら、レイヤは「ああ、ほしいよ」とすぐに答えた。
だけどレイヤの表情からは、なんだか焦っているようにも見えていた。
「子供……か」
子供はいつかほしいと思ってる。だけど、それは今じゃないような気もする。
私たちは夫婦だけど、夫婦だからこそ、言えないこともある。レイヤが私に想い人のことを隠しているように、夫婦であっても隠し事はあるのだから。
「アユリ、行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
レイヤは最近出掛ける前、毎日私の唇にキスをしてから出掛けていく。
レイヤからもらうキスは好きだし、嬉しいのだけど。
ただ、今何より厄介なのはーーー。
「カナト、起きて。仕事遅れるよ」
弟のカナトなのだ……。
「カナト、起きてってば」
「ん……姉ちゃん……?」
「もう七時半だよ?」
で? なぜカナトが、家にいるのか……?
それは遡ること二週間前ーーー。
二週間前、カナトは突然、家にやってきた。大きなキャリーバッグを一つ持って。
転がりこんできたのだ。