ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「わたくしは磁力魔法と消音魔法よ。磁力の方は、物体やわたくし自身に磁力を流して、引き寄せたり退けたりすることが出来ますの」
うららは能力について端的に説明した。実戦においては攻守に不備のない魔法だろう。
各々がそのような感想を抱いたところへ、うららは首を傾げた。
「今度はあなたたちのことを聞かせてくださる?」
小春はうららと紗夜に目をやった。
二人の態度や早々に魔法を明かした点を鑑みると、自分たちへの敵意は感じられない。
信用してもいいだろうか。
そう思ったとき、おもむろに大雅が二人の前へ歩み出た。
「どうするかは俺が見て決める。それでいいか?」
いつものようにポケットに両手を突っ込み、ふてぶてしくも悠々と振り返る。
しかし、何処までも仲間想いの彼の判断には、すべて任せても問題ないだろう。
「うん、お願い」
きっと、小春の心証と相違ない結果となるはずだ。
そう思いながら頷き、大雅に託した。
大雅は謹厳な面持ちで、まずはうららと目を見交わす。
「な、何ですの……?」
「いいから、三秒だけ黙ってろ」
恐らくこれまでの人生において、大雅のようなタイプの人間とは関わったことがないであろううららは、彼の乱暴な物言いに怯んだように口を閉じた。
大雅の頭の中に、うららの情報が流れ込む。
百合園うらら。聖ルリアーナ女学院高校三年A組。磁力魔法と消音魔法の持ち主。
彼女自身の言っていたそれらの点に嘘はない。
大雅は彼女の魔法について深く読み取った。
まず、磁力魔法。磁力を操る能力────うららの言葉通り、物体及び術者自身に磁力を流し、引き寄せたり退けたりすることが可能である。
生物同士、物同士、生物と物同士、あるいはそれらと術者同士といったように、適応範囲は広い。
ただ、それだけではなかった。
磁力魔法の真髄。どうやら、磁力で引き寄せられるのは、物体だけではないようだ。
「……魔法も引き寄せられるのか」
大雅は呟いた。うららはあえてそのことを口にしなかったのだろうか?
磁力で奪われた相手は無魔法の魔術師に戻るだけのようだ────すなわち、うららの魔法は、相手を殺さずして魔法を奪うことが出来る唯一のそれだった。
その場にいる全員が驚きを顕にした。
うらら自身も別の意味で瞠目し、大雅を凝視する。
「どうして、それを?」
「見ただけだ。まずかったか?」
大雅は相手の反応を窺うようなことを言った。
うららは首を左右に振る。
「とんでもないですわ。ただ、言うと警戒されるでしょうから、後で話そうと思ってただけですの。お気を悪くしたなら謝りますわ」
確かに、相手の魔法を奪取出来る能力の持ち主と聞けば、嫌でも防衛本能が働く。
たとえ命があったとしても、魔術師が無魔法となるのは、ほとんど死と同義なのだ。