ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
「それより、あなたがさっきから仰ってる“見る”って……どういうことですの?」
うららが口にしていない情報まで、大雅は完璧に言い当てた。目を合わせただけなのに。
「あー、後でまとめて説明する。悪ぃな」
大雅は軽く受け流すと、再びうららの魔法について読み取った情報を整理することにした。
もう一つの能力、消音魔法である。
両手を打ち鳴らすことにより発動可能で、再び手を叩くまで、術者と術者が触れた物体から発せられる音が完全に消失する。
周囲の音を拾うことは可能であり、音が消えている者同士の会話も可能だ。
また、両手を二回打ち鳴らしてから対象に触れることで、その特定の対象のみの音を消すことも可能だった。
そして────。大雅は、やや目を細める。
「……奪ったんだな、消音魔法は」
磁力魔法により奪取したようであった。
最早うららも驚かず、正直に首肯する。
「わたくしを襲ってきた魔術師と揉み合いになって、そのとき初めて、磁力で魔法を奪えることが分かりましたの」
「……ってことは、触れることで奪えるとか?」
陽斗が推測を口にすると、うららはまたも頷いた。
「ええ、厳密には三十秒間」
「なるほど。簡単だけど厳しい条件ね」
琴音は腕を組む。少なくとも意識があれば、知らないうちに魔法を奪われていた、という事態になることはないだろう。
消音魔法の元持ち主は、そういうわけにいかなかったようだが。
大雅は、今度は紗夜に向き直った。
「次はお前だ」
「…………」
伏し目がちな視線を上げ、紗夜は大雅と目を合わせる。
雨音紗夜。月ノ池高校の二年一組。毒魔法の持ち主。ここまでは言っていた通りだ。
大雅は先ほどのように、魔法を深く読み取ることにした。
あらゆる毒を扱うことが出来る毒魔法。かぶれる程度の軽い毒から、死に至るほどの猛毒まで様々に調整可能である。
どうやら、毒性が強くなるほど反動が大きくなるという弱点がある模様だ。
毒を生成するだけでなく、術者自身も毒性を持つことが出来るが、その場合が最も大きな反動を伴う。下手をすれば命を落としかねない。
また、術者の血液を飲ませることにより解毒が可能だった。必要な血液量は、毒の強さによる。
「なるほどな。だから注射器使ってんのか」
「……おい、大雅。俺らにも分かるように教えてくれよ」
一人、腑に落ちた様子の大雅に蓮は言った。大雅は少し考えるように宙を眺め、蓮たちと紗夜たちを見比べる。
「ああ、俺が見た情報を転送するってのはどうだ? いちいち説明し合うの回りくどいだろ」
大雅の得た紗夜たちの情報を小春たちへ、反対に小春たちの情報を紗夜たちへ、テレパシーにより一括で送り合うという提案だ。
「俺はいいぞ」
「私も。大雅くん、それでお願い」
大雅は未だテレパシーを繋いでいなかった面々とも繋ぎ、全員の意識へ呼びかける。
瑚太郎は夜が来れば切断されるだろうが、今はそれで構わない。
顳顬に触れながら、空いた方の手でそれぞれの腕に触れていく────。