ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
頭の中に何かが流れ込んでくるのが分かり、小春は思わず額に手を当てた。
言葉というよりは認識だった。紗夜とうららの情報が、勝手に脳裏に焼き付いていく。
こんな感覚は初めてだ。恐らく全員がそのはずである。一様に戸惑ったような表情を浮かべていた。
「凄いですわね。不思議な感じ」
「テレパシー魔法か。そういうこと……」
うららと紗夜は感嘆と納得を顕にした。
声に出して説明せずとも、能力の全容を把握していた理由に合点がいく。
「……なぁなぁ。魔法は分かったけど、紗夜が注射器を使う理由が分かんない。大雅はさっき“なるほど”って言ってたけど、何でなんだ?」
陽斗は首を傾げた。
注射器はリーチも短ければ、扱うのに手間もかかる。
素手から毒を繰り出せるのなら、そうした方がいいように思えた。
「“温存”しておくため?」
紗夜の魔法の特性を理解した上で導き出した解釈を、小春は確かめるように口にした。
果たして、紗夜は小さく首肯する。
「どういうこと?」
陽斗はさらに首を傾げた。自ら説明する気などなさそうな紗夜に代わり、小春が続ける。
「紗夜ちゃんの魔法は、毒性が強くなるほど激しい反動を伴うの。例えば戦いの中で使ったら、反動で動けなくなってやられちゃう」
しかし、戦闘においてこそ強い毒を使いたい────。だから。
「あー! 分かった、そういうことか。余裕がある間にストックを作っとくってわけだな」
今のような平常時にあらかじめ猛毒を産出し、注射器に蓄えておくのだ。
戦いの最中でなければ反動を受けても支障はない。
そのために注射器を用いるのは、単純に毒と相性が良いからだろう。
効率よく相手の体内に注入出来る。……あるいは、その点は単に紗夜の趣味かもしれないが。
「────ところで」
何となく話の流れが落ち着いたところで、紗夜は口火を切った。
「皆はこのゲームのことどう思ってるの……?」
この場にいるほとんどの面々が、眉を顰めたり俯いたりと否定的な反応を示す。
「……私は魔術師同士で争うんじゃなくて、ゲームを仕組んだ人たちを倒したいと思ってる」
「小春だけじゃねぇよ。俺たちな」
小春や蓮の言葉と、それぞれの強い眼差しを受け、紗夜とうららは顔を見合わせた。
やがて、うららは嬉々として頷く。
「どうやら、わたくしたちと同じ意志をお持ちのようね。良かったですわ」
「それじゃ、君たちも……」
「うん、私もうららも皆と同じ考え。同志と情報が欲しくて、あなたたちを尾行して接触したの……」