ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜

 “運営側を倒す”という目的に対し、すぐさま肯定的なリアクションを受けたのは初めてだった。

 戸惑いを顕にした奏汰に、紗夜は頷く。その言葉に琴音も安堵したように頬を緩めた。

「ちょうど良かったわ。私たちも情報が欲しいところだったの」

「でしたら、正式に同盟を組みましょう。早速、情報共有といきますわよ」

「あなたたちはどれくらいゲームについて知ってるの……?」

 紗夜に問われ、アリスは「はいはい!」と勢いよく手を挙げた。

「あたし、まとめてんで。見てみ」

 ポケットからスマホを取り出し、差し出すように掲げた。

 紗夜やうららだけでなく、小春たちも覗き込む。メモ画面に入力されている文字を目で追った。

【ルール(分かったこと)
・「魔法ガチャ」で代償と引き換えに魔法を獲得可能
・殺した魔術師から魔法を奪える
・魔法は一人5個まで
・魔術師でない者を殺すと、その魔術師は魔術師の資格を失い、魔法を没収される
・時空間操作系、回復系は体力消費が激しく、肉体への負荷が大きい
・魔術師の死亡、気絶で魔法は強制解除(例外あり)】

 小春は素直に感心した。既知のルールがほとんどだったが、何となくで認識していたものを明確に言語化出来るのは凄い。

 得意気なアリスだったが、うららは不満足とでも言いたげに腕を組んだ。

「甘いですわ。紗夜、見せてあげて。……情報を得るより与える方が多くなりそうですけれど、仕方ないですわね」

「な……。あんた、割と失礼やな」

 情報屋を自称するアリスは、芳しくない反応に腹を立てたようだった。プライドが傷ついたのだろう。

 紗夜は二人のやり取りを気に留めず、背負っていたうさぎ型のリュックサックを下ろした。中から一冊の小さなノートを取り出す。

「これ、読んで……」

 差し出されたそれを受け取った小春は、そっと表紙を捲った。今度は小春のもとに輪が出来る。

 活字のごとく読みやすい紗夜の美しい字で綴られた内容を、それぞれが目で追った。

【〈ウィザードゲームのルール〉

①魔術師同士で殺し合うこと。

②一般人を殺すと、ペナルティとして魔法を没収され、魔術師の資格を剥奪される。

③魔術師を魔法で殺すと、その相手の魔法を奪うことが出来る。ただし、1人が有することの出来る魔法の数は最大で5個まで。既に5個保有状態であれば、すぐさま取捨選択する。手動でスロット内のいらない魔法と入れ替えると、その瞬間処理される。また、殺したとしても魔法を奪うかどうかは自由。
※魔法以外で殺害した場合、死体の保有する魔法は即時消失。

④魔法の会得に代償がかかるのは「魔法ガチャ」を使用したときのみ。他の魔術師から奪った場合は代償なし。

⑤魔法は、殺した本人のみ奪取可能。魔法残留時間は5分。死後5分が経過しても死体に魔法が宿ったままだと、魔法は自然消滅する。

⑥魔術師は魔術師同士、認識はない。つまり、誰が魔術師で誰が一般人か分からない。ただし、見分けられる魔法もある。

⑦魔法を使用すると反動を受ける。特に時空間操作系、回復系は体力消費が激しく、連発することは難しい。あまり無理をすると吐血するなど身体にガタが来る。最悪、魔法の使い過ぎで命を落とす場合も。

⑧基本的に、術者が死亡あるいは気絶すると、魔法は強制的に解除される。例外もある。

⑨如何なる場合も魔法の譲渡は不可。

⑩共闘は自由。ただし、最終的に生き残れるのは、たった1人だけ】
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