ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
素早くドアの方を見た。開閉したような様子はなく、何より足音も聞こえなかったため、彼女の侵入にまったく気付かなかった。
最初からここに潜んでいたとでも言うのだろうか。……あるいは、瞬間移動でもして来たのだろうか。
「君は誰? どうして僕の名前を知ってるの?」
冬真は穏やかな微笑を貼り付け、うららに向き直った。
大雅も彼女に目をやる。タイミングの良さに感謝した。
「答える必要があるかしら。既にお察しなんじゃなくって?」
やはり、と冬真は合点がいく。琴音の仲間だ。ここへは彼女に瞬間移動させて貰って来たに違いない。
冬真の情報を流したのは大雅だろう。危惧した通り、とっくに本来の記憶を取り戻していたわけだ。
身体の内側に蓄積する苛立ちを表すように「……はぁ」とため息をついてぼやく。
「挑発のつもりか? 人がせっかく気を変えたのに」
つい先程、標的を琴音から変えたところだったが、どうやら無視はしていられないようだ。
しかし、何故琴音本人が来ないのだろう。敵陣ではあるが、ここには仲間である大雅もいる。そしてあの能力があれば、恐れるものなどなさそうだが。
「……さてと、早速片を付けさせて貰いますわよ。お喋りに来たんじゃありませんもの」
コツ、とローファーの音が静寂を揺らす。うららは躊躇なく駆け出し、冬真と距離を詰めた。
冬真は反射的に身構えたものの、避けるにはあまりにも時間がなかった。
想像以上に機敏な動きだ。
うららは両手で冬真の片腕を掴んだ。不意をついた行動が功を奏したようだ。ただ、このまま三十秒間耐えなければならない。
(いけるか……?)
大雅はただ成り行きを見守った。上手くいくことを願う他ない。
うららの触れた部分がぼんやりと淡い光を灯し始めるのを見た。大雅自身は初めて見る光景だが、あれは具現化した魔法かもしれない。
「何、だこれ……っ」
冬真は焦りを滲ませ、振りほどこうと腕を振った。
よく分からないが、触れられているとまずい────直感的にそれだけは分かる。
警戒した冬真は先ほど大雅がしたように、飛び退いてうららから距離を取った。
大雅は眉を寄せ、困苦を顕に唇を噛む。……うららの行動はあまりにも直球過ぎる。
何かしらの合理的な口実がなければ、冬真が三十秒も大人しく触れさせ続けるわけがない。いや、冬真でなくともそうだろう。
何の作戦も持たずに来たのだろうか。こうなれば、一旦退いた方がいいかもしれない。
「うらら────」
「桐生さん、舐めて貰っては困りますわ。わたくしはテレパシーなんて使えないけれど、今あなたが何を思ってるかは読めましてよ」
大雅の言葉を遮り、うららは言った。
自信ありげなその態度は、先ほどの冬真の抵抗や警戒など想定内であったと言わんばかりだ。
「マジで任せていいのか? 何なら俺が冬真を押さえて、その間に……」
「大丈夫、その必要はありませんわ」