ウィザードゲーム 〜異能力バトルロワイヤル〜
不意に冬真が倉庫裏に消えると、うららの両肩に手を添えながら現れた。
うららは物言いたげな顔で琴音を見つめ、冬真に従っている。
その様子からするに、再び絶対服従の術にかけられてしまったようだ。発言も禁じられたのだろうか。
「……電話で話してたときから操ってたのね」
「いや。その段階では、確かに術は解けていた。通話が切れてからだ」
冬真たちは倉庫の近くに潜んでいたわけだ。
通話も聞いていたのだろう。大雅が現れても、どの道危なかった。
「それで? 百合園さんを使って、私の魔法を奪うつもり?」
琴音は腕を組み、強気な態度を貫いた。
「それも考えたが現実的じゃない。百合園に術がかかっていると気付いてるお前が、三十秒間も触れられながら大人しくしているわけがない」
「当然でしょ。……なら、記憶でも書き換えてみる? それとも、私のことも絶対服従させてみる? それで、私を殺す?」
挑発するように言い、考える時間を稼いだ。
自分一人が逃げる分には何とかなる。しかし、うららはどうすればいいだろう。
ここに置いて帰れば、今度こそ永遠に冬真から解放されないような気がした。
律は琴音の言葉を嘲るように笑う。
「どれも外れだ。お前は殺すがな」
その瞬間、琴音は背後から何者かに捕らわれた。
首に腕を回され、振り返れない。
身長や腕の造形から、男であろうことは推測出来る。
突然の出来事だったが、冷静さを失っていなかった琴音は、思い切り肘を引き、相手の鳩尾に食らわせようとした。
しかし、そのまま身体が動かなくなる。金縛りに遭ったような状態だ。
(硬直魔法……!?)
そう思い至ると同時に、頭の中にその持ち主の顔が浮かぶ。
まさか、背後にいるのは奏汰なのだろうか?
さすがに琴音も動揺した。
正面では冬真がほくそ笑み、律は頷いている。
「それが硬直魔法か。有用だな」
琴音だけが状況を飲み込めない。何が起きているのだろう。
しかし、もしも背後にいるのが奏汰だとしたら、とっくに冬真に殺されているはずだ。